賃貸物件の明け渡しの際の“原状回復”については、これまで貸主と借主の見解の相違によるトラブルが多かったことを受け、今改正では、賃借人は借りた部屋に生じた損傷について原状回復の義務を負うことが明記されました。
ただし、規定された原状回復の定義にあわせて、通常の損耗や経年変化については原状回復義務の対象にならないことや、震災や、借主と無関係な第三者がもたらした損耗等のように借主に責任がない場合も除かれることも明記されています。
「原状回復」について
アパートなどの賃貸借関係においての「原状回復」の中で最も重要なのはいうまでもなく借りた物件を大家さんに明け渡すことですが、住んでいる間に取り付けたものがあれば撤収すること、また借りた人が通常考えられる自然損耗や経年劣化を超えるような”汚れ”や”壊れ”があった場合には、その超えると考えられる分は借りた人が修理、復旧することもこの義務に含まれます。
「原状」とは、つまりまったくもとの状態に戻すことではなく、普通に使っていればこの程度は汚れたり、痛んだりする部分(畳の色の変化など)は仕方のないことですので、法的な解釈とすれば、「それくらいは 大家さんも最初から分かっていることで、自然損耗、経年劣化部分は家賃に含まれている」という意味合いになっています。
では、具体的にどこまでが自然損耗、経年劣化と判断されるかですが、下に簡単な具体例を掲載しました。
平成16年2月に国土交通省から「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が出されており、その中に判断基準が記載されております。なお、国土交通省のホームページにも上記ガイドラインの概要が掲載されています。
自然損耗、経年劣化の具体例
<床>
- 畳の変色(日照・建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
- フローリングの色落ち(同上)
- 家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
<壁・天井>
- テレビ、冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気やけ)
- エアコン(借主所有)設置による壁のビス穴、跡
- クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
- 壁に貼ったポスターや絵画の跡
- 壁などの画鋲、ピンなどの穴(下地ボードの張替えは不要なもの)
- タバコのヤニ(クリーニングで除去できる程度のヤニ)
<建具・設備など>
- 網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)
- 設備機器の故障、使用不能(耐用年限到来のもの)
※出典元
仲介業者のための建物賃貸借契約のポイント!
平成17年3月5日発行
編集・発行 (社)全国宅地建物取引業連合会
教育研修会
「債務保証」について
最後に借主の「債務保証」についてです。
今回の民法改正は、基本的に借主側へ有利に働くものがほとんどです。現在の連帯保証人の制度は、借主が家賃を支払わなかったり、設備を壊して弁償できないなどの場合に、本人に代わって支払いをする、いわば借主と連帯して責任を負う制度です。そしてその支払額には上限の定め(極度額)がありませんでした。
民法改正では、保証をする対象の「極度額」をあらかじめ書面または電磁的記録で定めなければ無効とされることになりました。保証の上限を決めておくことで、連帯保証人が限度なく支払いを求められることを防ぐことができます。また、契約の途中で賃料が増額されたときも、それだけでは増額分に対する保証責任が連帯保証人に及ばないことになります。
●詳しくは法務省ホームページをご覧ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html