おしえてムーラン

相続登記義務化と問題点についての私見

昨年末の新聞に、現在は任意となっている相続登記を政府が義務化の方向で考えている―という記事が掲載されました。

所有者不明土地が拡大している

いわゆる空き家問題も含め、全国的に所有者不明の土地が増えていることが大きな社会問題になっています。法務省が実施した調査では、50年以上にわたって登記変更がないことによって所有者不明となっている可能性がある土地の面積は、九州をすっぽり呑み込むほどになっているとのこと。持主が不明ということは、全く利用されていない土地であるということになります。売買や賃貸は勿論、開発行為等もできないため、未利用地の拡大は経済全体にとっても大きな損失です。この所有者不明土地の拡大の要因が、相続登記が任意であり、義務ではないからだというのが政府の見解です。

相続登記をしないとどうなるか

私のところにも、「家を売りたいのだが、土地・建物の名義が亡くなったひいおじいちゃんのままだ…」というような相談がくることがあります。相続登記を行わないまま、40年、50年と放置すると、その間に被相続人の法定相続人の数はどんどん増えていきます。相続登記をするためには、全ての法定相続人が話し合って、遺産分割協議書に署名し、実印を押さなければなりません。放置された期間があまりに長いと、協議書の作成ができない状態になってしまいます。

なぜ相続登記をしないのか

新聞には相続登記をしない理由として、固定資産税を免れるために意図的にしないケースも多い旨記されていました。ただ、私の肌感覚からすれば、相続が発生した段階で、相続人の間でモメた、あるいは、モメるのがイヤで放置した―というケースの方が多いのではないかと感じます。

所有者不明土地を減らす有効な対策は…

このような所有者不明土地=未利用地を減らすために相続登記の義務化が検討されていますが、法案に、これに違反した場合の罰則を盛り込むことも検討されているようです。一方で、土地所有者の管理負担が多ければ、根本的な解決につながらないのではないかという意見もあるようです。そこで、法務省は合わせて土地所有権の放棄の可否も検討するようです。民間の個人が管理できない土地について、国や地方自治体に土地取得を相談できる仕組みを設けるというものです。これは私見ですが、現行の民法の相続に関する規定では、特定の不動産だけを相続放棄することはできないですし、現実的に地方自治体が民間の個人から土地を取得する仕組みができるか大いに疑問です。固定資産税は地方の市町村にとって、とても大きな財源です。市町村が土地を取得してしまうと自ら財源を減らすということになってしまいます。

最後に、全くの私見

若干論点はズレますが、所有者不明土地を調査であぶりだしたときに、相続人がいないまま亡くなった方の土地だということが判明するケースも出てくると思います。通常、こうした土地は弁護士などの相続財産管理人が選任され、それを売却した後にそのお金は国庫に帰属しますが、こうした土地について、まずは有効活用をすべきだと思います。青森に当てはめて考えれば、慢性的に雪捨て場が不足しています。又、昭和の時代に開発された分譲住宅地では、ゴミ置場が路上にあって通行の妨げになりがちだったり、ゴミ置場が敷地の前に設置された住宅土地は、売却するときに市場性の減価要因になったりします。所有者不明土地の対策も当然に必要ではありますが、国庫帰属地を雪捨て場、ゴミ置場等の公益的な用途に提供して活用し、その受益者になる人たちは、町内会単位で固定資産税程度の負担をすれば地方財政にも支障がないように思います。このような取り組みから、所有者不明土地の利用法に発展できれば、管理負担が減ることにより、不明土地そのものの解消に少しはつなげられるのではないかと考えます。

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