おしえてムーラン

民法改正(成年年齢の引き下げ)による影響は?

平成30年の第196回通常国会で「成年年齢の引き下げ」と「相続法改正」という、私たちの身近に関わる部分での改正が成立しました。今回の改正は、本則で民法そのものを改正し、附則で民法以外の関連法律を改正したものとなっています。相続法の改正も大切なのですが、今回は「成年年齢の引き下げ」についてフォーカスします。そもそも成年年齢の引き下げのきっかけとなったのは、2007年国民投票法の附則にて、公職選挙法上の選挙権の年齢要件を18歳以上の日本国民に与えたり、諸外国でも成年年齢を18歳にしている国が多いことも踏まえ、民法上の成年年齢に関して検討したことなどがあります。その後2015年には、改正公職選挙法も民法上の成年年齢に関して検討しています。そう思うと、今回の「成年年齢の引き下げ」については、以前から少しずつ検討されてきていたことなんだなって感じています。婚姻年齢も男女ともに18歳になり、親権者の同意も不要になります。また、養親年齢も20歳になりました。みなさんもご存知のように、法律の中には「成年」を要件とするものがたくさん存在します。ところで今回の改正ではすべての法令の「成年」を要件とする年齢が18歳に引き下げになったのかといえば、そうではありません。現行法の20歳を要件とするものもありますので以下に法務省のホームページで挙げているもののうち、一部特に気になったものを例示してみます。
〈18歳に引き下げた法令〉
・帰化の要件(国籍法)・社会福祉主事資格(社会福祉法)・10年用一般旅券の取得(旅券法)・人権擁護委員・民生委員資格(公職選挙法等の一部を改正する法律)など〈20歳を維持する法令〉・養子をとることができる者の年齢(民法)・喫煙年齢(未成年者喫煙禁止法)・飲酒年齢(未成年者飲酒禁止法)・勝馬投票券の購入年齢(競馬法)・勝者投票券の購入年齢(自転車競技法)・勝舟投票券の購入年齢(モーターボート競走法)など
…健康被害やギャンブル依存症への懸念から、飲酒や喫煙、競馬や競輪などは現行の「20歳」を維持した格好になるわけです。


成年年齢の引き下げで特に問題なのは、18・19歳の方が「取消権(未成年者取消権)」を失うことです。ちなみにこの未成年者の取消権は、現行法の20歳未満の者の法律行為のうち、法定代理人(親など)の同意がないものは原則取消しできるという権利です。成年年齢が引き下げになると、彼らはこの取消権を失うということになります。消費者契約法の改正も行われてはいます。ですが、それだけでは成年年齢の引き下げによる懸念材料を払拭することはできないため、その他の(たとえば「特定商取引法」など)法令の改正も政府では考えているようです。今回の民法改正で対象外になった社会保障制度や税制についても、成年年齢が引き下がったことで次の可能性があります。・国民年金(第1号)の強制加入年齢の引き下げ・iDeCoやNISAなどの税制優遇措置の年齢要件の引き下げこれからは今まで以上に若年層に対しての消費者教育が必要になるのではないでしょうか。

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