4月1日から、中古住宅の取引の際に「インスペクション(建物状況調査)」の説明が義務化されました。私たち宅地建物取引業者は、売買契約前の重要事項説明時に、その中古住宅がインスペクションを受けたものなのか、今後実施する予定はあるかを売主に確認し、買主に説明することになります。
インスペクションとは?
中古住宅の基礎や外壁にひび割れはないかなど、劣化の状況を目視や計測機器を使用して専門の検査技術者が「依頼主」に報告することを言います。前述の建物の外部に関することの他に、建物内部の小屋裏点検口や床下点検口から目視可能な範囲で調査します。主な確認事項は、①構造安全上の問題の有無(例)シロアリ被害、腐食、傾斜、ひびわれ、など。②雨漏りや水濡れの有無③配管設備の重大な劣化の有無といったところになります。
インスペクションの意義
買主にとってインスペクションを受け、安全性などが客観的に認められたものを購入できるのであれば、そうでないものと比べ相当に安心して購入できます。言い換えれば、売主は、インスペクションを受け、安全性などを客観的に説明できれば売りやすくなります。
誰がインスペクションを依頼するのか?
売主が依頼するのが主だとは思いますが、買主や私たちのような仲介者である宅建業者も依頼者となることができます。
既存住宅かし保険との関連
既存住宅かし保険とは、買主が購入後に構造体や雨水の侵入部分に欠陥が見つかった時に、保険会社から保険金で不具合の修繕費用を出してもらえる制度です。かし保険を付保するに当たり、建物の検査を実施することになりますが、インスペクションを行う前に、担当検査員にかし保険に入る意思がある旨を伝えれば、かし保険の検査と兼ねることもできます。通常のインスペクションと、かし保険の検査は、多少検査項目が異なるため、事前に伝えることがポイントとなります。
かし保険のメリット(主なもの)
①安心感がある。
宅建業者が売主の場合は、瑕疵担保責任を引渡から2年間負うことが最低限義務付けられていますが、宅建業者以外の売主の場合は、特にそのような定めはありません。したがって瑕疵担保責任を負わないという契約も有効に成立します。そうしたときに、かし保険に加入しておけば、その加入期間は構造体や雨水侵入部に欠陥があっても費用負担の心配が軽減されます。軽減という表現を用いたのは、免責金額が設定されていますので、少額な負担で修繕できるものについては保障されないからです。又、宅建業者の売主物件で瑕疵担保責任が定められている場合であっても、その宅建業者が倒産してしまったら何の補償も受けられないのが通常ですが、かし保険に加入していれば、その瑕疵保証を受けることができます。
②税優遇措置が受けられる
税優遇措置の中でも、メインは住宅ローン控除が受けられることだと思います。中古住宅で、新築後20年を超えると、原則的には住宅ローン控除を受けられないのですが、かし保険付きのものであれば控除の適用対象となります。宅建業者や建築業者から購入した物件の場合は、控除対象年限(10年間)の合計で上限400万円が、業者以外の売主から購入した物件の場合は200万円を上限として控除されることになります。又、業者から購入した物件で、かし保険付きの物件の場合は、すまい給付金の対象にもなります。かし保険にかかる検査費用、保険加入費用を考えても、充分な恩恵を受けることができることになります。以上、インスペクションとかし保険の概略を述べてきました。いずれにしても検査費用がかかりますし、検査の結果、不具合が明らかになった場合、売主にとっては、却って売りにくくなるという側面も持ち合わせています。これから運用が開始され、ある程度の問題点も明らかになれば、まだ多少修正の余地がある制度なのではないかと思います。