東京証券取引所が、1月に4月4日からスタートする新しい市場区分への企業の所属を発表しました。東証はこれまでの1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4市場から、プライム、スタンダード、グロースの3市場に再編されます。
再編するねらい
東証が市場区分を再編するねらいは、①市場コンセプトの明確化②企業価値向上の動機付けの二つです。東証1部は2185社(1月5日現在)ですが、このうちプライムに移行するのは1841社ですから300社以上はスタンダードに移行することになります。2013年に東証と大阪証券取引所が統合した際、大証にあったジャスダックをそのまま維持したため、成長が期待される企業の多いマザーズとの違いも不明確なまま放置されていました。こうしたことも踏まえた上で、最上位市場においても、その求める基準を高め、企業に努力を促す目論見もあります。
アメリカ市場と比べた現状
その高められた基準を満たすプライムに移行する企業であっても、欧米に比べれば相当に見劣りすると言われています。上場企業の時価総額の中央値(時価総額を大きい順に並べた真ん中の位置で、その市場の標準的な企業規模を示すもの)は、約599億円ですが、ニューヨーク証券取引所の3分の1以下です。また、プライムの時価総額の単純平均は、約3950億円ですが、これもニューヨーク証券取引所の約5分の1程度。さらにアメリカの巨大企業の時価総額は、約390兆円のアップルを筆頭にマイクロソフト、アルファベットなどがひしめいていますが、日本はトップのトヨタ自動車でさえ37兆円ですから、アメリカのトップの10分の1ということになります。
解散価値等の視点
プライム企業は、PBR(株価純資産倍率)においても市場評価の低さが目立ちます。PBRは株価の1株当たり純資産に対する割合を示しますから、1倍で解散価値相当ということになります。その1倍を下回る企業はプライムの46%に上ります。これは企業が投資家の求めるリターンを上回る利益を上げられていないことを意味します。
期待される効果
このような状況下にあって、今回の再編で期待されるのは、企業の新陳代謝を促すことに集約されます。本来東証1部は、選ばれた優良企業のみが集まる最上位市場だったはずなのですが、東証は上場企業を増やすことが使命とばかりに上場基準の緩和を行ってきました。これからは、経営不振企業をプライムから退出させたり、グロースやスタンダードから将来有望な企業を育てプライム移行を促すなどの活性化が求められます。
TOPIX採用基準の変更
TOPIXは、東証1部のすべての銘柄で構成される東証株価指数の略称です。日経平均株価が、東証1部上場のうち各業種を代表する企業など225社に絞られた指数であるのに対し、東証1部の全体を表すものです。日本株への投資は、6~7割は外国人と言われますが、指数構成銘柄を全般に買って運用するインデックスファンドからの資金が入ると、株価総額の小さい銘柄が割高になるという問題があります。また、海外投資家にとっては、日本株の購入銘柄が多いほど資産管理銀行に払う管理費用が多くなるというデメリットがあります。管理や売買のコストが大きくなると指数以下の運用成績になりかねません。今後は、株式数から大株主の持分など、流動性を欠くものを除いた流通株式時価総額ベースで100億円以上がTOPIXの採用基準となります。但し、いつから新基準が適用されるかは、1月13日現在不明確で、4月1日の東証1部銘柄を採用した指数で、当面は発表されるとのことです。