「令和」がスタートしました。平成ではバブルがはじけ、日本の経済は混迷の中で模索を続けていたように思います。経済大国といまだに言われる日本ではありますが、その世界経済に占める位置は中国などの台頭もあり相対的に低位となってきています。
今年の公示価格と今後の動向予測
3月下旬に公示価格が発表されました。全国的にみると、全用途平均は4年連続で上昇しています。青森市においても、76地点中4地点が上昇、下落は33地点ですので半数以上は横ばいでした。市全体でみると、底打ち感が出てきたと言えると思います。但し、上昇した浜田2丁目が3.2%と、その上昇幅を広げたのに対し、下落地点はほぼ郊外の地域となっています。いわゆる街中は、上昇又は横ばいで今後も推移すると思いますが、郊外においては下落幅は縮小したものの、今後の人口減少予測を鑑みれば、下げ止まるのがいつなのかは見えづらい状況です。毎年、公示価格発表後にこのコーナーで地価の傾向について記してきましたが、上昇地域と下落地域の格差は広がりを見せるばかりであり、今後もその趨勢は変わらないのではないかと思います。
建物の価格は…
新築住宅の単位面積当り価格(坪単価)は上昇し続けています。様々な要因があると思いますが、建築業界の人手不足による人件費のアップが価格に転嫁されていることは大きな要素だと思います。また、円安は資材の輸入コストの増加につながります。最近の株式市場を見ていると円安でなければ株価が下がるという見方が強く、円安期待圧力が強いように感じますが、建築資材を含め原材料を輸入に頼る日本の生活者にとっては、消費の様々な局面でのコストアップにつながってしまうことになります。さらに、建物価格については、近年暖房設備や窓、外壁といった躯体に関連するところまで部材の性能が向上しているものの、それが1坪当たりの価格上昇の一因にもなっています。平成12年(2000年)4月に「住宅の品質の確保に関する法律(以下、品確法)」が施行されたことにより、建築業者がお客様に引渡した後10年以上、主要構造部等について瑕疵担保責任を負うことを義務付けられたことも、粗悪な住宅を排除する目的を達成するとともに、住宅価格を引き上げる要因にもなったと思います。今後、上昇幅は縮小するかもしれませんが、上昇傾向は続くのではないかと思います。
中古住宅の価格についての理解が重要
新築住宅の価格の上昇は、中古住宅の建物部分の価格を引き上げる要因になります。中古住宅の建物の価格を判定する上での主たる3要素は、①再調達価格 ②経済的耐用年数 ③経済的残存耐用年数の3つです。再調達価格とは「今、この建物を建てたらいくらかかるか」という価格です。建てた時の価格ではありません。もちろん「昔は一般木造住宅の坪単価が35万円位だったけど、今は60万円くらい」などという一般論のみをそのまま反映させるわけではありません。前述のように部材の性能の向上による価格上昇分もありますから、そうした部分は除いて考える必要があります。とはいえ、「昔、坪単価35万円で建てた」家が再調達価格で35万円相当を上回ることはご理解いただけると思います。また、経済的耐用年数も伸びてきています。経済的耐用年数は、建物の物理的耐用年数と必ずしも一致するものではありませんが、昔の建物に比べ物的な耐用年数が伸びてきていることは経済的耐用年数に当然に影響を及ぼします。再調達価格が上昇し、経済的耐用年数が伸びるということは、中古住宅の建物部分の価格を押し上げるということになります。
最後に
人口減少に伴い、土地と建物の経済的価値は、相対的に建物の価値を上昇させています。住宅購入の際には、土地の利便性と建物の規模や品質を総合的に考え合わせて意思決定することになりますが、資産を購入するという側面が必ずありますので、そうしたことも頭の片隅に置きながら、満足できる住まいの購入をしていただければと思います。