おしえてムーラン

老後資金2000万円不足問題について

先月は、老後資金として2,000万円が不足する―ことが話題となりました。従来から年金制度は改革しないと持続できないと言われており、国民の多くは理解を示していたはずなのに、ちょっと今さら感のあるドタバタだったように感じます。

報告書の内容は…

「2,000万円不足」の部分だけがクローズアップされてしまいましたが、金融庁金融審議会でまとめた報告書の要旨を簡潔にまとめると、①平均的な世帯で1ヵ月あたり5万円不足する。65才から30年間生きているとして、5万円×12ヵ月×30年間で、ザックリと2000万円位不足する。②65歳時の平均的な貯蓄額は約2,200万円。但し、住宅ローン残債がある、というものです。つまり、上記12を考え合わせると、平均的な世帯の実際の不足額は、65歳時の住宅ローン残債を若干下回る程度と読み取れます。

不足額の把握は正しいのか?

あくまでも報告書で示されているのは、平均的な世帯であり、当然に個々の世帯により事情は異なります。仮に、前述の話が概ねあてはまるような世帯であっても、65歳時の住宅ローン残債の多寡や、その対象となる住宅の今後のリフォームや建替の必要の有無が、家計に大きな影響を与えることは明らかです。自身のライフプランを具体的に検証してみることが肝心です。

制度上の問題

いずれにしても、現行の年金制度は世代間扶養の考え方に基づいていますが、年代別の人口構成が大きく変わった今、根本的な見直しを図る必要に迫られています。しかし段階的に、また複合的に家計を支える要素などを考慮して決定しないと世の中が混乱します。一粒で効く特効薬的な政策は作りようがないと思います。

現行制度を複眼的に見る

人口構成の変化とその今後の予測からすれば、若い世代ほど“年金はアテにならない”と考えるのは尤もだと思います。ただし、現在の受給水準が将来から見て高いものだとすれば、その受給高齢者を扶養している子世代は、間接的にその思惑を受けていることになります。負担と給付は、複眼的に見ることも大切かと思います。

家計を潤すには…

仮に年金だけでは老後に金が不足するとして、それでも家計を潤そうと考えれば、①労働により収入を増やす②投資収益を得るの2つが考えられます。①の労働収入は、現在の受給者やこれから間もなく受給対象となる人にとって最も現実的な方法です。②の投資によって収益を得る方法は、対称的に若い世代におススメな方法です。長期の方が複利の効用で運用成果が出やすいからです。高齢になって不慣れな投資により損失を被っては元も子もありませんが、退職金や年金の一部を運用するのも一つの方法です。(具体的な方法案は、3月号に記しましたので弊社HPよりご覧ください)ただ、人手不足と言われる世の中で、まだ働ける高齢者の活用は、年金制度の側面から見ても重要な課題だと思います。

最後に…

そもそも、自助によって皆が老後資金を賄うのが筋ではありますが、現実的には理想論です。だからこそ年金制度が存在します。とはいえ、本来の筋を忘れてもいけないと思います。“自分の老後資金は自分でなんとかする。でも、事情によりそれが困難な人もいるのだから、そういう人の一助になってやろうじゃないか”という心意気を持つ人が広く世の中に増え、そうした考えが国民の総意として根付くことが、実は一番大切だと思います。

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