住宅を取り巻く環境が大きく変わってきています。①空家問題、②住宅価格の高騰、③エネルギーや資源と関連した問題…これらの問題は、個々に論じられることが多いのですが実社会においてはそれぞれが独立しているものではなく、相互に影響を与える関係にあるため、これらを総合的、立体的に考え合わせ良い落とし所を見つけなければなりません。
住宅に係る基礎的背景
解決策を見出だすためには、その前提としての背景を知る必要があります。日本の総人口は約20年前がピークで、その後減少傾向が続いていますが、世帯数のピークは来年になるとみられています。ということは、この約20年間は人口が減っているのに世帯数が増加している。にもかかわらず、空家は増加しているのが現実です。これは単身世帯が増加傾向にあることに起因することであることは想像に難くないのですが、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、単身世帯の割合は今後も増加し、2020年の35%から2040年には39%に高まるとみられています。特に独り暮らしの高齢者の割合は13%から17%へと増加する見通しです。
一方、夫婦と子供で構成される世帯は26%から23%へと下がる見込みですが、こうした人口動態を前提の一要素としてこれからの住まいを考える必要があります。
空家について
空家は問題が顕在してからも増え続けており、2028年には約1500万戸に急増するという見方もあります。独り暮らしの高齢者が亡くなった後に、相続人が住まないケースが増えているからです。青森も含めた地方都市においてはこうしたケースが多く、私のところにも三大都市圏に住む相続人から、青森の物件の売却依頼の相談はよくきます。
空家と一口に言っても、売れる(売りやすい)空家と売れにくい空家があります。この両者を分ける要素はいくつかありますが、最大の要因はその立地にあります。
戦後の高度経済成長からバブルがはじけるまで、日本の街は外延的に開発されました。
立地を要因として売れないものは、①バブルがはじける直前の“外延”と、②旧来からある集落的なところであり、この2つの地域は概ね隣接しています。言い換えれば、旧来からの街中とバブル以前のいわば新街中にあれば、空家はそのままの状態か、若しくは手を加えれば(リフォーム、解体など)需要に応ずることができますが、立地を要因とした売りづらい物件については、売るための方策を考えることも困難です。
特に前述のような外延に在る地域は、山や丘陵地を開発したところである場合が多いため、近年の気象条件に照らすと土砂災害の危険も平地よりは高まります。
立地さえ、ある程度の範囲内であれば需要に合わせた対策をとることで売却できますが、需要者からみて、タダでもいらない類のところに買手を見つけるのは困難です。
本当に大事な空家政策とは・・・
喫緊に考えなければならないのは、①立地を要因とした売りづらい空家と、②相続人が多数になっていて共有物としての処分が困難(相続人の意見がまとまらない)な空家、③所有者が存在しない(倒産した会社名義等)空家、④相続人の経済的理由により解体等もされずに放置されている空家の以上4類型と、これら各類型の複合型だと思います。
①については、自治体が収納した上で、固定資産税と同等の利用料を徴収して町内会等に使用されるのもひとつの方法ではないかと思います。②については、相続人が明確になっていないケースも散見されるため、まずはそれを確定した上で、充分に相続人同士が話し合うことが肝要です。但し、このケースは話し合いが不調に終わることが予想されるため、民法上の共有物の処分に関する規定を変更しない限り解決は望めないと思います。③④は現在、強制執行可能となっていますが、税金を投入した解決になります。
このように考えると、やはり立地は大きな要素だと思われます。ある程度立地がよくて売りやすいところであれば、その売却資金から解体費を捻出できたり、或いは解体費相当額を差し引いて売却してもマイナスになることはありません。
まとめ
前述の売りづらい空家の4類型の原因は、①立地、②感情、③お金、の3要素に集約されます。都市政策についての公的機関の担当部局が、立地に起因して売れない空家が多い地域をある程度明確に線引きして、そこについては公的資金を投入して有効利用を図る、又はそのようになる準備を進めていく以外の方策は無いと思います。また、相続人多数で合意形成困難なものについては、相続登記の義務化などにより少しづつ法整備が前進していますが、感情的な面については共有者の話し合いで決着をみるのが唯一の方法です。